第22回無料診療キャンプ報告書/感想文④:熊坂先生(鍼灸師)

第22回無料診療キャンプに参加して

杏園堂鍼灸院

熊坂由希子(鍼灸師)

   このたび、初めてイルファー主催のフリーメディカルキャンプに参加させていただきました。

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このキャンプにはほぼ毎年当院から鍼灸師が参加しており、諸先輩から様々なアドバイスをもらっていたにもかかわらず、現地では驚きの連続でした。

ここでは、来年以降につながることを期待して、私の反省点と今後のキャンプでの鍼灸治療に期待することを中心にレポートさせていただきたいと思います。

1.治療時間と計画性

DSC02183通常日本では一患者につき40~50分の治療を行っているが、一日400人が押し寄せるキャンプでは鍼灸ブースでも平均30~40人を診ることとなった。

診療は朝9時半から昼休みをはさみ、日没(だいたい4時半くらい)まで。となると、診療時間はだいたい1日6時間ほど。

つまり、一人の患者さんに向きあえるのは10分弱の計算となる。

軽い問診をして、鍼を施術し、必要であればお灸を施す。

お灸の燃焼時間はだいたい3~4分ほど。

ケニア人の肌色では発赤がわからないこともあり、患者の「Moto!(熱いの意味)」の声がタイマー代わりとなった。DSC02281

ただ、最初はこの時間の割り振りがうまくいかず、水曜日などはその日のうちに診終えることができずに6名ほどの患者さんを帰してしまう結果となった。

受付でその方々には翌日並ばなくても優先的に診るカードを配るなどの配慮をしてくれたが、そのうち再度鍼灸ブースを訪れてくれたのは1名のみ。

せっかく並んで下さった方に大変申し訳ない思いをした。

翌日以降はお年寄りで動作が緩慢である場合は座位のまま治療するなどの工夫をし、また受付で配る鍼灸の問診票の数をあらかじめ調整するなどして、患者を帰す事態には至らなかったが、ひとりでも多く診たいという私の欲が招いた事態であったと大いに反省した。

また、幸い今回は治療効果に難を唱える患者さんはいなかったが、短時間でも確実に効果が伝わる治療技術をさらに身につけなければいけないと強く思った。

2.問診票の有効利用法について

鍼灸の問診票は稲田先生があらかじめ用意してくださっていた。

全身の身体図が描かれており、スワヒリ語と英語、日本語も併記されたとても使い勝手のよいもので問診の際に大変役立った。

ただ、以前使っていたであろうと思われる問診票が鍼灸ボックスの中に入っていたので拝見すると、それらの中には「どのような症状か?」「いつからか?」「考えられる原因は?」などの記載があり、より詳細な問診ができるものがあった。

何らかの理由で、今回使ったより簡素なものへとバージョンアップしたのだと思われるが、以上の問診事項はいずれにしても口頭で確認するものなので(少なくとも「いつからか?」は重要)、問診票にはあらかじめ記載してあってもよいように思った。

また、今回治療していて気付いたのは、腰痛の発現箇所がほとんどの場合、仙腸関節および下部腰椎であり、椎関関節性であるということ(私の感覚だと日本では、もう少し上の部位で筋・筋膜性であることが多いと感じる)。

日常的に重いものを持つことが多いということや女性であれば出産数が多いことが原因のように思われるが、こういった現地の疾患の特徴をつかむうえでも、鍼灸師の側が問診票をもう少し有効に使う術を考える必要があると感じた。

今回も通例にしたがって記載した問診票を現地に置いてきてしまったが、もし可能であれば、持ち帰って統計を取ることができれば今後の鍼灸治療の参考にできると思う。

3.コミュニケーション能力――英語力および他科との連携について――

鍼灸ブースは今回、日曜日のHIV診療が6名、月曜日が20名、火曜22名、水曜47名、木曜37名、金曜37名、土曜27名の患者数であった。

月曜、火曜の二日間はなかなか患者が来ないのでいぶかしく思ったが、受付で「鍼灸を希望する人」にのみ、問診票が配られていたとのこと。

単に、「腰痛」「膝痛」などを訴える患者さんも一般内科へとまわされていたらしい(もちろん他に内科症状があったり、鎮痛剤などの処方が必要な場合もあるので、内科を受診することは間違いではない)。

これは、稲田先生が気付いて下さったことだが、いぶかしく思った時点で自ら受付に確認しに行けば2日に及ぶ患者の不均等は避けられたのではないか。

また、それ以外でも現地ボランティアの皆さんともう少し意思疎通がうまくできれば、と感じる瞬間が多くあった。

明らかに鍼灸不適応の患者を他科に回したい場合や、ランチタイムでの会話など。

また、腰痛や膝痛、そして原因不明の季肋部痛などが内科で多く見受けられたとのことで、ドクターが鍼灸を勧めて下さる場合があったと診療後の夕食の場などで知った。

また、腰痛や股関節痛は内科疾患や婦人科疾患が原因であることもあるため、鍼灸ブースにドクターを呼んで診てもらったこともあった。

これらの場合も、もう少し私に英語力があって患者と直接やり取りができたら、時間短縮やスムースな連携につながったと思う。

これらの原因は私自身の英語力の不安にあることは確かなので、次回(その機会を与えられることがあれば)への課題としたい。

4.チーム内での鍼灸師の位置づけ

DSC02369今回、私の裏テーマとして掲げていたのが、チーム内の健康管理。というと、たいそうなものに受けとられるかもしれないが、要するにチームの皆さんの疲労に対する「手当て」だ。

チームを構成するのは医師や薬剤師、看護師などプロフェッショナルな方ばかりなので、体調管理は万全であるとは思うが、それでも慣れない土地での診療で疲労がたまることは避けられないだろうと思う。

そのような中では、鍼灸やアロマテラピーといった代替療法が多少なりとも役に立てる場面があるだろうと考えた。

鍼灸に対して抵抗のある方もいらっしゃるので無理強いはもちろんできないが、お声かけをして希望される方がいる場合は喜んで施術させていただいた。

結果、チーム内で8名の方が鍼灸を受けて下さり、また毎朝の診療前にはティートリーの精油をマスクに塗布させていただいた(ティートゥリーは抗菌・抗ウイルス作用がある)。

ただ、限られた時間のなかで施術できなかった方もいらしたので、突発的にその場で「やりますよ」と声かけするのではなく、日時を指定して希望者を募るなどの工夫をすれば遠慮なくお受けいただけたのかもしれない。こちらも次回への課題としたい。

今回、最初から最後まで皆を牽引し続けて下さった宮城島団長、たずねればドラえもんのように何でも出して下さった石川先生、昨年の経験が全て装備に活かされていた占部さん(写真を参照のこと!)、DSC02189

タスカーを開ける笑顔が素敵な歯科の佐藤先生、最後の夜私の御託を飽きずに聞いて下さった青山さん、忙しい最中鍼灸ブースまで出向いて診察して下さった橋本先生、鍼灸やアロマのことをたくさん聞いて下さった福地先生、ギターを弾く姿(だけではないですが!)がとてもかっこよかった蓮池先生、いまも現地でがんばっている四倉くん。そして、過酷な環境のもと現地で活動し続ける稲田先生、つらい事件のなか私たちを歓待してくださった日本赤十字の五十嵐さん、遠くエンブの街より駆けつけてくださった看護師の林さんと柳瀬さん。

このチームの一員となれた幸運に、心から感謝します。本当にありがとうございました。皆さんに出逢えたことは私にとって、一生の財産です。

最後に。プムワニでの診療はもとより、キャンプ最終日に起きたテロ。正直に言って、今回の経験が私にとってどのような意味を持つのか、まだ明確な答えが出せずにいます。

ただ、そういった混乱のうちにある効用とでもいったらよいのでしょうか。出逢ってしまったからには、今後もケニアのことを考え続けざるを得ないのだろうなと、思っています。いつかまた、現地に行くことになるのだろうという予感と共に。

いずれにしても、私にとってとても大きな得難い経験となったことは確かです。このような場に快く送り出してくれた職場の皆さんと、そして家族に、心より感謝して結語としたいと思います。

Posted by KY

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